財産分与の話し合いでは、「相手名義の預金も対象?」「住宅ローンが残る家はどうする?」「何を基準に分ける?」といった疑問が重なります。まず必要なのは、結論を急ぐことではなく、婚姻中に形成した財産を漏れなく一覧にすることです。
この記事では、財産分与の基本、対象になる財産と対象外の財産、話し合いで決めておきたい項目を順番に整理します。
財産分与とは
財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得・維持した財産を、離婚する際または離婚後に分ける制度です。法務省は、夫婦の共同生活の中で形成した財産の公平な分配を基本的な性質として案内しています。
名義だけで対象が決まるわけではありません。たとえば、婚姻中に一方の収入で購入した不動産がその人の単独名義であっても、他方が家事などを担って生活を支えていた場合、実質的な夫婦の財産として扱われることがあります。
法務省「財産分与」制度の性質、分与額の決め方、名義に関する基本的な説明
対象になる財産・対象外となる財産
裁判所は、婚姻中に夫婦の協力で取得または維持した財産を財産分与の対象として案内しています。まずは次のような財産を、夫婦どちらの名義かにかかわらず確認します。
- 預貯金、現金
- 土地・建物などの不動産
- 株式、投資信託などの金融資産
- 自動車、解約返戻金のある保険
- 退職金など、将来受け取る予定の財産
- 住宅ローンなどの債務
一方、婚姻前から各自が所有していた財産や、婚姻中でも相続・贈与によって一方が取得した財産などは、原則として対象外と考えられています。
ただし、婚姻前の預金と婚姻後の生活費が同じ口座で混在している場合や、相続した不動産の維持に夫婦の資金を使った場合など、区別が難しいケースもあります。対象範囲に争いがある場合は、個別に専門家へ確認してください。
財産を分ける割合はどう決める?
財産分与の額や方法は、まず夫婦の話し合いで決めます。家庭裁判所の手続では、婚姻中に取得・維持した財産の額や双方の寄与、婚姻期間、生活水準、年齢、職業・収入などの事情が考慮されます。
2026年4月施行の改正後は、財産の取得・維持への寄与の程度が異なることが明らかでない場合、寄与は相等しいものと扱われます。ただし、どの財産をどのように評価し、現物または金銭でどう分けるかは個別事情によります。「必ず半分になる」と決めつけず、財産一覧と評価時点をそろえて話し合うことが大切です。
住宅ローンが残っている家は先に確認する
住宅は、財産の価値とローン残高を別々に把握します。少なくとも次の項目を確認しましょう。
- 不動産の現在の名義
- 住宅ローンの契約者、連帯保証人・連帯債務者
- 不動産の現在価値(査定額など)
- 住宅ローンの残高
- 離婚後に誰が住むか、売却するか
不動産の名義を変えても、金融機関とのローン契約が自動で変わるわけではありません。売却額よりローン残高が多い場合や、離婚後もどちらかが住み続ける場合は、金融機関や専門家への事前確認が必要です。
話し合いの前に集めておきたい資料
財産の存在や金額を確認できる資料を、同じ時点を基準にそろえると話し合いがしやすくなります。
- 預貯金通帳の写し、残高証明書
- 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 住宅ローンの残高証明書
- 証券会社の取引残高報告書
- 保険証券、解約返戻金の試算書
- 退職金の見込額を確認できる資料
裁判所の財産分与請求調停でも、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しや残高証明書などが必要資料として案内されています。
裁判所「財産分与請求調停」手続の概要、申立期限、必要書類、申立書式
2026年4月以降の請求期限は5年
2026年4月1日以後に離婚した場合、離婚後に家庭裁判所へ財産分与の調停・審判を申し立てられる期間は、離婚した日の翌日から5年以内です。
2026年4月1日より前に離婚した場合は、従前どおり離婚した日の翌日から2年以内です。離婚した日によって期限が異なるため注意してください。
離婚前であれば、夫婦関係調整調停(離婚)の中で財産分与について話し合うこともできます。期限直前まで待たず、財産と資料の整理を早めに始めることが重要です。
合意した内容は書面に残す
話し合いで合意できたら、対象財産、評価額、分け方、支払期限、名義変更や引渡しの時期などを具体的に書面へ残します。金銭の支払いを分割にする場合は、支払いが滞った場合も想定しておく必要があります。
公正証書を検討する場合は、離婚の公正証書は自分で作れる?流れ・費用・必要書類も確認してください。
よくある質問
相手名義の預貯金や不動産も対象ですか?
相続した財産も分ける必要がありますか?
離婚後いつまで請求できますか?
まとめ
財産分与の準備では、名義にかかわらず婚姻中に形成した財産を洗い出し、基準日をそろえて金額を確認します。住宅ローンなどの債務も忘れず、何を誰が取得し、必要な支払い・名義変更をいつ行うかまで整理しましょう。
対象範囲や評価に争いがある場合、財産の全体像が把握できない場合は、自分たちだけで結論を出さず、弁護士等の専門家への相談を検討してください。