離婚を考えるなかで、いったん別々に暮らすことを選ぶ人は少なくありません。気持ちを落ち着けるための距離として、あるいは離婚に向けた準備の一歩として。どちらの場合でも、出る前に整えておくと、あとで困りにくくなることがあります。
この記事では、別居の前に用意しておきたいこと、別居中の生活費、子どもを連れて別居する場合の注意点、別居したあとの手続きを順に整理します。
身の危険がある場合は、準備より安全を優先する
暴力を受けている、身の危険を感じるという状況では、この記事の準備がそろっていなくてもかまいません。まず安全を確保してください。DV相談+は、電話相談を24時間受け付けています。
DV相談+(プラス)電話は24時間受付。チャットなどの受付時間は公式サイトで確認できます
緊急時は110番、緊急ではない相談は警察相談専用電話「#9110」も利用できます。
別居前の準備チェックリスト
同居しているうちのほうが確認しやすいものを中心に、別居の前に用意しておきたいことです。すべてをそろえる必要はありません。できるところからで十分です。
- 住まい:別居先(実家・賃貸など)と、入居できる時期
- 当面のお金:数か月分の生活費の見通し、自分名義の口座
- 財産に関する資料の控え:預貯金の通帳、給与明細、保険証券、住宅ローンの書類など
- 持ち出すもの:本人確認書類、健康保険証、印鑑、常備薬、子どもの母子健康手帳など
- 子どものこと:学校・園への連絡や、通学・通園をどうするか
- 連絡手段:別居後に相手とどう連絡を取るか(直接、メールのみ、など)
財産に関する資料は、離婚の条件のなかでも大きな財産分与の話し合いの土台になります。別居後は確認しづらくなるものが多いため、控えを取っておくと後の整理が楽になります。
別居中の生活費(婚姻費用)
別居しても、離婚が成立するまでは夫婦です。別居中の夫婦や子どもの生活費などを婚姻費用といい、夫婦で分担するものとされています。話し合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることができます。
裁判所「婚姻費用の分担請求調停」手続きの概要、申立先、必要な費用などが確認できます
金額の目安は、裁判所が公表している婚姻費用算定表で、夫婦それぞれの収入や子どもの人数・年齢から確認できます。
裁判所(養育費・婚姻費用算定表の掲載ページ)子どもの人数と年齢ごとの表が掲載されています
別居の前後で、生活費をいつから・いくら・どう受け渡すかを決めておくと、別居後の暮らしの見通しが立てやすくなります。
子どもを連れて別居する場合
2026年4月に施行された民法の改正で、父母がともに親権者である場合の親権の行使のルールが定められました。法務省の解説では、このルールは離婚後だけでなく、婚姻中にも適用されるとされています。
そのうえで法務省は、正当な理由なく相手に無断で子どもの住まいを変えた場合、個別の事情によっては、父母が互いに人格を尊重し協力する義務に反すると評価される場合があるとしています。考慮される事情には、別居の動機や経緯、別居前後の話し合いの有無、子どもの年齢や意向などが挙げられています。
一方で法務省は、DVや虐待から避難する必要がある場合には、相手に無断で子どもと転居しても、その義務に違反するものではないと説明しています。また、DVや虐待からの避難が必要な場合は、父母の一方が単独で親権を行使できる「急迫の事情」に当たるとされ、この「DVや虐待」は身体的な暴力を伴うものに限られないとされています。
法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」改正の概要とQ&A形式の解説資料が掲載されています
身の危険がある場合は、相談を待たずに安全を優先してください。そうした事情がなく、子どもを連れて別居するかどうか迷う場合は、可能であれば別居の前に弁護士や公的な相談窓口に相談しておくと安心です。改正の内容は共同親権の記事でも整理しています。
別居したあとの手続き
住民票
住所を移した場合は、住民基本台帳法により、原則として14日以内に市区町村へ転入届(別の市区町村へ移ったとき)または転居届(同じ市区町村の中で移ったとき)を出す必要があります。
DVやストーカー行為などの被害を受けている場合は、申し出によって、加害者からの住民票の写しなどの交付請求を制限する支援措置があります。住民票を移す前や手続きのときに、今の居場所を相手に知られないための対応を市区町村の窓口に相談してください。
総務省(住民基本台帳・DV等被害者への支援措置の案内)申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できる制度の案内です
郵便物
郵便局に転居届を出すと、届け出た日から1年間、旧住所あての郵便物を新しい住所へ無料で転送してもらえます。届け出から登録までに3〜7営業日かかるため、早めに出しておくと安心です。
日本郵便「転居・転送サービス」窓口・ポスト投函・e転居での届け出方法が確認できます
子どもに関する手当など
こども家庭庁によると、離婚協議中のために別居していて生計を同じくしていない場合は、子どもと同居している人に児童手当が支給されます。受給するには、離婚協議中であることを確認できる書類を市区町村に提出して、認定請求をする必要があります。必要な書類はお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
こども家庭庁「児童手当Q&A(配偶者と別居されている場合の取扱いについて)」確認できる書類の例や、手続きの流れが掲載されています
別居中に残しておきたい記録と、条件の整理
別居中は、生活費の受け渡しや、子どもとの交流、相手とのやりとりなど、あとから振り返りたくなることが増えていきます。日付つきで記録しておくと、話し合いや専門家への相談で経緯を説明しやすくなります。書き方は離婚日記の書き方で整理しています。
離婚に向けて話し合うことになったら、親権・養育費・財産分与など、決めることを一覧で確認しておくと抜け漏れを防げます。全体像は離婚で決めること一覧で確認できます。
よくある質問
別居中でも生活費(婚姻費用)を請求できますか?
別居したら住民票は移さないといけませんか?
子どもを連れて別居してもいいですか?
まとめ
別居の前には、住まいとお金の見通し、財産に関する資料の控え、持ち出すものを整えておくと安心です。別居中の生活費は婚姻費用として分担するものとされ、目安は算定表で確認できます。子どもを連れて別居する場合は事情によって判断が分かれるため、迷うときは専門家に相談しましょう。そして、身の危険があるときは、準備よりも安全が先です。