離婚の話し合いでは、親権・養育費・財産分与といった「決めること」に意識が向きます。その一方で、見落とされやすいのが離婚したあとに住所や連絡先が変わったときの連絡です。

引っ越し、転職、電話番号の変更。どれも起こりうることですが、あらかじめ決めていないと、必要なときに連絡が取れない状態になることがあります。この記事では、何を決めておけるのか、そして住所を知らせたくない事情がある場合にどんな選択肢があるのかを整理します。

なぜ、あらかじめ決めておくのか

離婚は、関係のすべてが終わることを意味しません。未成年の子どもがいる場合、養育費の支払いと親子交流は離婚後も続きます。どちらも、連絡が取れることが前提になっています。

連絡先が分からないままだと、これらの場面で最初の一歩が踏み出せません。逆に言えば、決めておくのは「相手を縛るため」ではなく、必要になったときに話ができる状態を残しておくためです。

決めておける4つのこと

1. 何が変わったら知らせるか

「連絡先」とひとまとめにせず、対象を挙げておくと分かりやすくなります。

すべてを含める必要はありません。知らせる項目は、お互いの状況に合わせて選べます。

2. どうやって知らせるか

連絡の手段も決めておきます。メッセージアプリやメール、書面の郵送、第三者を通じた連絡など、話し合いの状況に合った方法を選びます。直接のやり取りが難しい場合は、親族や支援機関を介する方法もあります。

3. いつまでに知らせるか

「速やかに」と定めることもできますし、「変更から14日以内」のように日数を決めることもできます。日数を決めておくと、後から「知らせた・知らされていない」の認識がずれにくくなります。

4. 住所そのものを伝えるかどうか

ここが、いちばん慎重に決めたい項目です。住所を伝えることに不安がある場合、住所を含めずに、連絡が取れる手段だけを決めておくという形も選べます。次の章で詳しく整理します。

住所を知らせたくないときの選択肢

相手に住所を知られたくない事情がある場合、無理に住所を含めた取り決めをする必要はありません。考えられる形はいくつかあります。

また、住民票などの情報については、公的な制限の制度があります。配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待およびこれらに準ずる行為の被害を市区町村に申し出て、市区町村が支援の必要性を確認した場合、相手からの請求があっても、住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票(除票を含む)の写し等の交付、戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付を制限する措置が講じられます。

この措置の期間は、確認の結果を申出者に連絡した日から起算して1年です。期間終了の1か月前から、延長を申し出ることができます。手続きは住民票のある市区町村の窓口で行います。

総務省|住民票の写し等の交付制限(DV等支援措置)
対象となる方、制限される内容、支援措置の期間についての公式案内

住所を伝えない形で取り決めをする場合でも、養育費の振込先や、子どもについての連絡手段は決めておけます。「すべてを伝える」か「何も決めない」かの二択ではありません。

書面に残しておく場合

話し合って決めた内容は、離婚協議書などの書面に条項として記載しておくことができます。「住所、連絡先または勤務先に変更が生じたときは、速やかに相手方に通知する」といった形です。

書面の作り方や、公正証書にする場合の流れは、次の記事で整理しています。

連絡が取れなくなってしまった場合

すでに相手の所在が分からない状態でも、取り決めそのものがなくなるわけではありません。

養育費や婚姻費用の未払いがある場合、調停調書や公正証書などの書面があれば、給与や預貯金の差押えを申し立てる手続きがあります。相手の勤務先や口座が分からない場合には、裁判所を通じて第三者から情報を取得する手続きもありますが、財産開示期日が3年以内に実施されていることなどの要件があります。

どの手続きが使えるかは、取り決めの形式や状況によって異なります。管轄の家庭裁判所や、弁護士等の専門家へご確認ください。

裁判所|債権執行等(養育費等に基づく差押え)
養育費の未払いがある場合の手続きについての公式案内
裁判所|第三者からの情報取得手続
勤務先や預貯金の情報を取得する手続きと、その要件

こうした手続きは、書面が残っていることが出発点になります。連絡先の取り決めは、その手前で「まず話ができる状態」を保つためのものです。

決めておきたいことを、項目ごとに
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よくある質問

離婚後、引っ越したら相手に住所を知らせる義務はありますか?
法律で一律に定められているものではなく、離婚条件のひとつとして父母の間で決めておく事項です。離婚協議書などに記載しておく方法があります。取り決めの内容や有効性は個別の事情によって異なるため、書面にする場合は専門家へご確認ください。
相手に住所を知らせたくない場合はどうすればいいですか?
住所を含めずに、連絡が取れる手段だけを決めておく方法や、第三者を通じて連絡する方法があります。また、DV・ストーカー行為等・児童虐待の被害について市区町村が支援の必要性を確認した場合、住民票の写しの交付等を制限する措置を受けられます。お住まいの市区町村の窓口にご相談ください。
相手が引っ越して連絡が取れなくなったら養育費はどうなりますか?
取り決め自体がなくなるわけではありません。調停調書や公正証書などの書面がある場合、給与や預貯金の差押えを申し立てる手続きがあります。相手の情報が分からない場合の情報取得手続にも要件があるため、管轄の裁判所や専門家へご確認ください。

まとめ

住所や連絡先が変わったときの連絡は、離婚条件の中では小さな項目に見えます。それでも、養育費や親子交流が続く場合には、後から効いてくる取り決めです。

決めておけるのは、何が変わったら・どうやって・いつまでに知らせるか、そして住所そのものを伝えるかどうかの4つ。住所を伝えたくない事情があるなら、連絡手段だけを決めるという形も選べます。

いま決められないことは、「未定」のままで構いません。話し合いの項目として、一度置いてみることから始められます。