妊娠中に離婚を考えるとき、ふつうの離婚とは違う迷いが出てきます。まだ生まれていない子の親権は決められるのか。養育費はいつから発生するのか。生まれた子の父は誰になるのか。

決められることと、生まれてからでないと決められないことがあります。この記事では、その線引きを順番に整理します。

生まれる前に、親権者は決められません

子がまだ生まれていない以上、離婚のときに親権者を決めることはできません。子の出生前に父母が離婚した場合、親権は母が行うこととされています。

2026年4月1日施行の民法改正により、子の出生後に、父母の協議で、父母の双方または父を親権者と定めることができるようになりました。つまり、出生前に決めるのではなく、生まれてから改めて話し合う形になります。

法務省|民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)
2026年4月1日施行。親権に関する改正の公式案内

「決められない」からといって、話し合わなくていいわけではありません。出生後にどうしたいかを、離婚前の段階で共有しておくことはできます。生まれてから一から話し合うより、そのほうが進めやすくなります。

養育費は、生まれる前でも取り決められます

養育費については、支払いの始期を「出生した月」とする形で取り決めをしておく方法があります。実務では、出産予定日をあわせて記載することが勧められています。

決めておける内容は、生まれている子の場合とほとんど変わりません。

金額は、時期によって変える形にすることもできます。「0歳から」「小学校入学から」のように段階を分けて決めておくと、成長に応じた負担の変化を織り込めます。

ただし、公正証書にできるかどうかは公証人の判断によるとされています。出生前の作成を断られる場合もあるため、事前に公証役場へ確認してください。公正証書の作り方は離婚の公正証書は自分で作れる?で整理しています。

生まれた子の父は誰になるか

養育費を誰に求めるかは、法律上の父が誰かによって決まります。ここが妊娠中の離婚で特に押さえておきたい点です。

婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は、原則として前夫の子と推定されます。法律上の父が決まるため、養育費を求める相手もその人になります。

2024年4月1日施行の民法改正により、次の点が変わりました。

この改正は、原則として施行日(2024年4月1日)以後に生まれる子に適用されます。

法務省|民法等の一部を改正する法律について(嫡出推定制度の見直し)
2024年4月1日施行。嫡出推定・嫡出否認についての公式案内

前夫の子としたくない事情があるとき

離婚後300日以内に生まれた子について、前夫を父とする出生届でなければ受理されない扱いが原則です。ただし、医師が作成する「懐胎時期に関する証明書」を添付する取扱いがあります。

この証明書には、推定される懐胎の時期と、その時期を算出した根拠が記載されます。推定される懐胎の時期の最も早い日が離婚の日より後であると認められる場合に限り、民法772条の推定が及ばないものとして扱われます。

すでに前夫の子として戸籍に記載されている場合、その訂正には裁判所の手続が必要とされています。

法務省|離婚後300日以内に生まれた子の出生の届出の取扱いについて
懐胎時期に関する証明書を添付する場合の手続き

どの手続きが使えるかは個別の事情によって異なります。早い段階で弁護士等の専門家へご相談ください。

妊娠中だからといって、他の条件が変わるわけではない

財産分与や年金分割は、妊娠しているかどうかに関わらず、通常どおり話し合う項目です。親権や養育費の話に気を取られて、こちらが抜けてしまうことがあります。

離婚前に整理しておきたい項目の全体像は、離婚条件チェックリストで確認できます。

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よくある質問

妊娠中に離婚した場合、生まれた子の親権者は誰になりますか?
出生前に親権者を決めることはできません。子の出生前に父母が離婚した場合、親権は母が行うこととされています。2026年4月1日施行の民法改正により、出生後に父母の協議で、双方または父を親権者と定めることができるようになりました。
離婚後300日以内に生まれた子の父は誰になりますか?
原則として前夫の子と推定されます。2024年4月1日施行の改正により、300日以内であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定されることになりました。
生まれる前に養育費の取り決めはできますか?
支払いの始期を「出生した月」とする形で取り決めておく方法があります。出産予定日をあわせて記載することが勧められています。公正証書にできるかは公証人の判断によるため、事前に公証役場へご確認ください。

まとめ

妊娠中の離婚では、親権は出生後に決める、養育費は出生前でも決められる——この線引きがまず押さえどころです。

そして、生まれた子の父が誰になるかは、離婚からの日数と再婚の有無で変わります。養育費を誰に求めるかに直結するので、早めに確認しておく価値があります。

いま決められないことは「未定」のままで構いません。出生後に話し合う項目として書き出しておくだけでも、生まれてからの負担が変わります。